コレまでのお話〜
よう! 俺の名前はアーダルベルト・フォン・ファーレンハイト。帝国軍で一二を争う美形上級大将だ。(素敵ウインク)
貧乏貴族の家に生まれた俺はガキの頃から随分スレてて、良識をもった人が眉を顰めるようなことを平気でやってたときもあった。いや、若かったし俺も。
そんな俺の世界がガラっと変わったのはつい最近の、さんじゅー過ぎてから。人いきれでかすむ貴族の夜会から「ウゼェ」とか荒みまくり全開で思いながら逃げてきた夜の庭園で、噴水の脇にたたずむ女神に俺は出会ったんだ!
彼女の名はエマイユ。黒髪碧瞳で明るく優しく時折見せるやるせない笑顔にひきつけられて仕方のない可愛い可愛い可愛い可愛い・・・いや、それはいいとして。
とにかくその日から世界はエマイユ色に輝いた。ああ、もうハッピィ〜〜きゃw
しかしそれは同時に苦悩の日々のはじまりでもあった。何しろ今まで女と来たらヤっちまってから利用するだけ利用して貢がせて貢がせて捨てるみたいな付き合いしかしてなかった。それでイキナリ普通の付き合いをどうしろと? イヤ、過去の悪の所業とはキッパリ手を切ったのですよ、そうキッパリと。
日々そんなことを考えつつも、エマイユに会えばその笑顔一つで全身が喜びに満たされ、口付け一つが壮大なセレモニーにすら感じられて・・・って俺もしかして今まで人に惚れたことなかった? マジで? うわぁヤなカンジ。そしてありがとうエマ。
まぁそんなこんなで煮え切らない態度がエマに随分不安を抱かせたことだろう。それについてはマジあやまります。もうしわけありませんでした。マジごめんなさい。
そんで煮詰まって煮詰まってぐつぐつぐつな所にロイが開けてくれた突破口とか色々のおかげで俺はエマにプロポーズが出来たんだが、そのロイエンタールがエマの父親だったってんだから唖然呆然吃驚仰天。ってエマのやるせない遠慮テメーのせーかよ! てか俺の相手エマだってわかってて唆すなよ、ド畜生!
んけどまぁ不幸中の幸いってやつなのかもしれない。ロイエンタールなら俺の過去の悪行の八割、・・いや九割しってるから、エマのことが本気ってのも認めてくれてるだろう。士官学校のころ絡みまくったからなぁ、いやまったくスカしてて可愛い後輩だったしでしたよっ。
それはさておき。
まぁエマの父親がロイってだけならまだしも母親の件でまだなんかイロイロイロイロあるらしい。だもんで折角「お嬢さんを僕にください!」とかって土下座してビシっとキめようとする気満々の俺は置き去りに、あれよあれよで吹っ飛ばされて・・・。
って?
俺は何故いま吹っ飛んでるの?
あらあら? そういえば体が超スローモーで捻ってますよ?
ロイ! さり気無く蹴りを抉りこんだな!!!? 相変わらず器用なヤツ!
んで目前に床!? なんで!? え? フェザーンに重力があるから? イエソレぐらい知ってますって。
ってコレ実は走馬灯!!!!!?
めしゃっ(完)
きっとしあわせ・・・ 第8話
「きゃーーー! アル!! 父様なにするの!」
「あー、だいじょぶ。そいつ不死身だから」
「そんなわけないでしょ・・・」
「壊れた家電は叩いても直らんが壊れたファーレンハイトならぶっ叩けば直るから」
「せめて治るっていって!」
「阿呆は死ななきゃ治らん」
しかしやっぱりファーレンハイトは不死身だった。
「ってぇ〜〜、ロイエンタール貴様何しやがる!」
「ホラ、だいじょぶじゃねーか」
「アル、コブになってるよぅ」
「エマ、大丈夫だ。これはギャグだから一回別の方向向いてまた戻したら治ってる。ほら、あっちむいてホイ」
グリ(素直)
くるん(戻る)
「あ、本当だ治ってる。便利ぃ〜」
「って頭はまだジンジン痛むんだが・・・」
「そのうちなおる」
「そう? って何の話だっけ?」
涙目になりながらエマイユはまだ前を向く。
「さぁ何の話だったか。なぁ、オーベルシュタイン」
イキナリ話を振られたオーベルシュタインだったが、こめかみを強く押さえながらロイエンタールを睨んだ。義眼で睨まれるとかなりこわい。
「・・・、私なりに話をまとめていたのだが、つまり、今彼女を敵に回しているのは卿なのだな?」
「今のダラダラ長い話でよくわかるな、お前」
「勝算は?」
「ない」
「って、父様」
「お前の母親本気にさせると洒落にならんのはいつものことだが・・・」
ロイエンタールは一人娘をみて厳かに宣言する。
「私利私欲に走ったあいつは無敵だ」
「・・・・・・・笑えん・・・・」
傍らに立ったオーベルシュタインが頭を抱える。
「しかもあいつを敵視していたやつらは巧く手足を封じたと思ってるようだが、俺に言わせればわざわざ鎖を切ってやったのと同じことだ。あいつと人間とでは自由のリーチが違いすぎる」
まぁ、頭悪い連中がいくら踊らされようと俺は構わんが。と無下にまとめる。
「手段を選ばないヤツってのはいるがな」
「ああ」
「あいつは選べないんだ、自分の弱さを知ってるから」
「・・・そうか」
オーベルシュタインはその意味の深さを思い目を伏せる。
「えげつないぞー」
「ヲイ」
「いや、ホントだ。昔から」
「・・・・・・・・・・彼女は、強いな」
「強い。だから、損ばかりしている」
「・・・・、そうだな」
椅子の上で器用にロイエンタールは寛ぐ。
「オーベルシュタイン、一つ訂正しておく。お前は今あいつが敵に回しているのが俺だと言ったが、それは少し違う。あいつは俺以外敵に回さない。あいつが俺以外を眼中に入れることなどありえない。俺以外に興味も示さない。ただ、エマイユは俺の娘だ」
「ほう?」
「あいつは俺の子供を産んだんだ」
「・・・・・、徹底しているなァ彼女も」
「多分、それすら好き好んでのことではないと思う。ほかのことまで考えている時間がなかったんだ」
「処置無し」
「ああ、そういうことだ」
そんなのんびりとした、どこか切ない会話を聞きながら、エマイユはやっと自分が父と母の娘であると納得していた。
自然に胸にしみてくる想い。それは蒼くて、透明で、悲しくて、優しい。自分を存在させるまでにいたった、不思議な思い。
嬉しいと思った。
ふと隣りをみると、水色の瞳が優しく自分をみつめてる。
なにもいわずとも、恋人がこの思いに共感してくれている。
なんとなくあたたかで、なんとなくしあわせで。
ああ、これでいいんだ。これでよかったんだ。そう、自然に微笑みが浮かんだ。
「大好き」
しあわせな思いを共有できる相手がいるということは、なんてしあわせなことなんだろう。
そんな相手と出会えたことに対する言葉がこれ以外浮かばなかった。
エマイユの心からの台詞に、ファーレンハイトは思わず顔を覆っていた。
「まいったなァ、・・・いやホント」
「アル?」
「これはやっぱり、ロイエンタールに礼を言わなくちゃいけないかもしれない」
「アーダルベルト?」
「エマイユ、生まれてきてくれてありがとう」
「えっ」
「そーだよな、エマイユはロイエンタールの子供だから今のエマイユになったんだよな。それで君の母親の子供だから君になったんだ。ああ。そうなんだ・・・」
ファーレンハイトは今までずっと自分が不幸だと思っていた。可哀想な身の上だと思っていた。そう思わなくてはいけないような身の上が悔しくて悔しくて負けるものかと意地になって歯を食いしばった。
地位と名誉と金、それさえ手にいれれば見返してやれるとずっと思っていた。きっと幸福とは遥か遠くにある蜃気楼だと。その幸福が今腕のなかにある。
「ああ、これでよかったんだ。全部、全部これでよかったんだ」
今度はファーレンハイトの思いがエマイユを共振させる。ファーレンハイトが泣きそうなほど幸せを感じている理由。
エマイユもずっと自分が不幸だと思っていた。きっと二人はとても似ていたのだ。
ずっと不思議に思っていたファーレンハイトが自分を選んだわけ。自分がファーレンハイトに感じた直観。ずっと心に引っかかっていた滓。
それが今、融けていく。
年齢も、容姿も、立場も、何も関係なかった。ファーレンハイトがファーレンハイトだったから自分は惹かれたのだ。
なぁんだ、心配して損した。
きっと自分は知っていたのだ。出会った瞬間から今日の日のことを。
彼となら、幸せになれるということを。
「なんっか、ほっといても首まで幸せに浸りきってますって感じだな」
「複雑か? 父親としては」
白けた風情で眺めた父親に、これ幸いと軍務尚書がまぜっかえす。
「そこで複雑になれるんならあいつが仕組んだ情操教育教材としての娘は完璧だったんだろうが、さすがにヤツもそこまで期待してないだろう」
「お前らってどうしてそうなんだ・・・・」
「人には向き不向きがあるんだから仕方無い」
オーベルシュタインの頭痛は止むことがない。
「でも、どうしても一つだけ納得いかないのよね」
「うん?」
ファーの腕の中で顔を顰めたエマが言った。
「お父様とお母様の娘ならもっと美人になってもいいはずなのに」
エマイユの「もしかして貰われっ子なんじゃ・・・」などというくだらない妄想のネックは実はコレだった。
「ナニをいうかエマイユ。母親に似たらそんなマトモな造作になるわけがないだろうが」
聞きとがめた父親がすかさず修正を入れる。
このロイエンタールの台詞を理解するのに、もっとも頭の回転が早かったラインハルトでさえたっぷり20秒を要した。
しかしいくらラインハルトが鈍感でも流石に思い至った結論を口にすることは出来なかった。ロイエンタールの言葉を理解したものたちは愕然としながらも次々にラインハルトに倣いその問いをただ一人発する権利がある少女に譲ったのである。
「ちーさま、かーさまって、・・・・ブスなの?」
エマイユは生まれてこの方何千回、何万回となく母の姿を胸に思い描いてきた。幼いころこそ「きっと優しくて綺麗で・・・」と単純に考えていたが、長じるにつれ「父親の相手なのだからきっと果てしなく度量が広い海のように寛大な女性か、父をも手玉に取れる妖怪変化か・・・」と想像が複雑になっていった。父の年を考え合わせても母が年上の女性だと想像するのは無理からぬことである。わりとありとあらゆるパターンを考えつくしたエマイユだったが、その想像の中で母はいつも美しく笑んでいた。母が父と同い年だったこと以上にショックだ。だって、父が父だし。
勿論その場にいた帝国人も似たような考えだった。
だってロイエンタールなのだ。帝国が誇る勇将、華々しい武勲。やや影のあるそのヘテロクロミアが流した浮名は数知れず。ロイエンタールはその麗々しい容姿とともに、同僚たちからは輝かしい栄光の具現と見られていた。だって男のくせに容姿端麗で頭脳明晰で白兵戦だってイケるしなにより女タラシなのだ。そ・の・ロイエンタールが?
「ブスといえるほどの特色もない顔だぞ」
シレっと答える父親に絶望寸前の顔になったエマイユがオーベルシュタインを振り仰ぐ。この会場で、彼だけが父以外に母を知っているはずだ。
しかし、エマイユが仰いだその男も手を口元にあて納得いかない顔をしている。
「ロイエンタール? それはなんの冗談だ・・・?」
「冗談なものか。俺は純粋に顔の造作の話をしてるんだ」
「は? 何の話だ? 待て。いいから待て」
違う、違う! 自分の知っている彼女は優しくて、残酷で、美しい人のはずだ。
自分の見ている彼女は・・・。
「だから、+αを無視した部分でだ。俺の方が美人なのは本当だろう?」
違うといったらお前の義眼の技師に苦情を入れてやる。と目が言っている。
オーベルシュタインは眉間に皺を寄せさらに考えこんだ。
「・・・・・・・、どちらが、どちらがより容姿に恵まれているかと聞かれれば、それはロイエンタールだ。エマイユ嬢」
オーベルシュタインの返答は真摯だった。
「けれど、彼女の方がより美しいと思う。性別を無視した上でだ」
苦悩する義眼をエマイユは見上げる。その瞳の奥にこれまでにない光が灯った。
「ちーさま、かーさま、このフェザーンにいらっしゃるのよね?」
「ああいる」
「・・・・・・・・・・・、このフェザーンに・・・」
エマイユは目を見開いたまま思考の淵に潜ったようだった。
その時ロイエンタールの後方にツツツと蜂蜜色の髪の影が忍び寄り力任せに同僚の軍服を引きずりよせた。
こんなことを冗談にもできるのは自他ともに親友とみとめるミッターマイヤーぐらいのものである。
「なぁロイエンタール、俺たちってお友達だよな?」
「断る」
「無二の親友だよなぁ? あぁん?」
「やなこった」
かすりもしない本題は云わなくても当然一つしかない。
「ちなみに聞くが、主命でもか・・・? ロイエンタール」
うざい親友とセコイ君主にうんざりしかけていたロイエンタールに、不意にエマイユが振り向いて宣言した。
「お父様、エマイユ母様を見つけるわ。絶対! 草の根を分けてでも探し出して見せるんだから!」
毅然と宣言された父親は親友と君主に冷たいヘテロクロミアで一瞥をくれると、娘ににっこりと毒々しい笑みを向けた。
「エマイユ、陛下とミッターマイヤーがお前の母親探すのを手伝ってくれるらしいぞ。よかったな」
「父様、それはちょっと・・・」
エマイユは思考を半分高速回転の領域に置き去りにしたまま、残り半分で額に手をあてた。
「案ずることはない、フロイライン・ロイエンタール。予も皇帝である以前に一人の人間であるのだ」
綺羅綺羅しくラインハルトが云うのはつまり権力の私物化。
「銀河帝国皇帝の力をもってすればご令嬢の母親など三日でみつかるとも」
((無理だな・・・))
ロイエンタールとオーベルシュタインは冷静にそう計算した。
「ふふふ、皇帝になったカイがあった。ありがとう専制君主制・・・」
「「「「「「「「「「「ジークカイザー!」」」」」」」」」」」
確かに背後でバカ盛り上がっているやる気満々な提督たちを使えば宇宙にある不可能の50パーセントぐらいはどうにかなる。
しかし、残りの不可能が誰の手のひらの上か・・・陛下、あなたは覚えておいでだろうか?
「・・・・・、なんか、面白おかしい事態になったらしいな」
ファーレンハイトがボソリと呟く。
「い、いいのかな・・・」
かくしてここに、一大スペクタクルとなるフェザーン縦断ウルトラクイズが開催されるのである。
「罰ゲームは怖くないらしいな」
義眼の元帥がヘテロクロミアの元帥をみる。
「な」
「あーーーー! しまった。ドサクサに紛れて忘れてたが、エマイユは俺が幸せにする。約束するロイエンタール。というわけでお嬢さんを俺にください」
ラスト棒読み、ファーレンハイト。
「お前それさっきも云ってたぞ?」
「え? いつだ?」
「俺が真剣白刃取りしてるとき・・・」
「あー、いや、つか、マジで正気だから」
「てかエマ俺のじゃないし。別にエマイユがいいならそれでいいだろ」
散々からかって満足したらしいロイエンタール。この男の実力をもってしてさえエマイユの母親を敵に回すのはたいした負担なのだ。たまには息抜きもしないと・・・。
「悪いが、私は先に失礼させてもらうぞ」
さっきからの蓄積頭痛がどーしょーもないレベルに達しているオーベルタインはこめかみを押さえながらさっさと帰る風情だ。
「ああ、じゃーな、オーベルシュタイン」
今日一日で随分打ち解けたらしいロイエンタールが片手を挙げる。
「ロイエンタール・・・」
ふとオーベルシュタインが振り向いてロイエンタールを見る。
「ん?」
「フラウ・ロイエンタールによろしく」
オーベルシュタインの意図不明のその一言は、なぜか人々の耳にいつまでも残っていた。
切れのいい足音とともに真っ直ぐに歩んでいたオーベルシュタインがふと前を見ると、庭園の暗がりからでてきた影と目があった。
「ヤン、元帥?」
「あら、オーベルシュタイン閣下もうお帰りですの?」
「今まで・・・どちらに」
そういえば会場では顔を見なかったような。
「人いきれに負けてしまって・・・お庭におりましたのよ。うっかりうたた寝をしてしまったみたいですの。けれどエマイユと約束があるので、今から戻るところですわ」
その結い上げた髪でどう器用な体勢をとればうたた寝ができる? とはオーベルシュタインは聞かなかった。
ヤンは瞳を伏せ零れた前髪を指ですくい耳にかける。白い指がスローモーションで鼓膜にやきついた。
「一つ、聞きたいのだが、あなたはロイエンタールの何処がいいのだ?」
「あらぁ・・・・」
呟いたかと思うとそれまでの上品な笑顔がぐらりと崩れ、楽しくて楽しくてたまならいという笑みに取って代わる。オーベルシュタンは恐ろしいと思うと同時に、この女性を美しい以外の言葉で理解するロイエンタールが信じられなかった。
「愚問、ですわね。全部に決まっているでしょう」
冷たい眼差しと艶笑。覚悟はしていながらも、オーベルシュタインは鳥肌が立つのを押さえられなかった。男の美しさはもって生まれた容姿ともって生まれた運動神経でその9割が決まるというのに・・・女の美しさは奥が深い。もしくは意地が悪い。ヤンを特徴が無い地味な容姿と呼ぶには酷く無理がある。
「元帥、貴女という方は一体何をしでかしてくれるんだ・・・」
今日のオーベルシュタインとことん貧乏くじである。
「あら、わたしがエマイユを産んだ頃はお互い唯の生意気な帝国人の少年と同盟人の少女でしたわよ。不幸な偶然でお互い元帥になんてなってしまいましたけど」
「しかし、15だろう・・・」
「参考までに、なぜお解りになりましたの?」
面白そうなヤンの問に、一応オーベルシュタインはマジメに答えた。
「貴女の意識、関心が常にエマイユ嬢に注がれていたからだ。逆にロイエンタールのことはまるっきり認識していないように思われた。どんな意味があるのかと思っていたが、まさかあの二人が親子とは・・・」
「似ていないでしょう。エマイユは、あれにも私にも本質が似ていない」
一瞬、ほんの一瞬だがヤンが少女めいた笑顔を浮かべた。
「自慢の、一人娘なんですよ」
「もう一つ、聞いてもいいか?」
「なんです?」
「何故、軍人になったのだ?」
「・・・・・」
ヤンは暫し沈黙していたが、普段カイザー以下帝国人たちに向けている態度に戻ってにっこりと笑んだ。
「オスカー・フォン・ロイエンタールとまったく同じ理由からですよ」
一言残し軽やかに歩み去っていく。その背中を見送りながらオーベルシュタインはどこまでも深い錐のような痛みを胸に感じていた。
「ところでファーレンハイト、お前怪我はどうなったんだ?」
「あ? 忘れてた、ホントだ、もう痛くない」
「こぶは? 触ってもいたくない?」
婚約者が心配してぺたぺたと触るがもう痕跡も残っていない。
「すげー」
続く
よかったね、エマ。キミタチが幸せになってくれて嬉しいよ。実は君のことただのファザコンなんじゃ・・・とか思って心配してたんだが、こっちこそ「なぁんだ」だよ。そうか、君がファーを選んだのはそんな理由があったんだね。初めて知ったよ。
や、はっきり云って実はキミたちそんな幸せラブラブになる予定なんか無かったからね。私のほうこそ涙うるうるでもうこのままハッピーエンドで最終回にしてあげたいんだけどね。ごめんね、確かにキミ主人公だけど、一応この話ロイヤンだからね。悪く思わないでくれたまえ。お母さん美人でいいだろう? ああ、なんにせよよかったよかった。
と、いうわけで、別に今まで気付かなかったかたなんてだーれもいませんよね?
とおうぜんっこの話はロイヤンです。