「ねーえ、オスカー。りほちゃんから「このオハナシの主人公はエマイユです」って苦情がきてるわ」
「ふーん、あっそ」
っごめんなさい! ついさっき思い出しました! BYりほ
きっとしあわせ・・・ 14話
ちょっとまってください? ちょっとだけでいいんです。
なんでヤン元帥と父様が喧嘩してるんです?
なんでこんな険悪に笑顔なんですか?
一服盛ったってなんのことですか!!
ところで「オカアサマ」ってどういう意味でしたっけ!?
ついでにウチの息子返してください! お願いしますから!
「こんちゃーーっす!」
「こんばんわぁーーーー、お邪魔しますぅーーー」
「ミキハラ先生!? 志保さん!」
どうしてここに!
けれど二人はなんでもない顔で大荷物を抱えて春宵の間の入り口に立っていた。
「こんばんはぁー、エマちゃん今日も可愛いわぁ。元気にしてる?」
「ちょっとだけ自信がありません・・・」
一体今何が起こってるんでしょうか。
「あー、来るの早すぎたか? それとも遅すぎたか? 一応あの馬鹿どもには喧嘩の類は一切禁止してあるんだが。オスカーっ!」
美樹原祐司本気の怒声は本気なだけ結構な迫力だ。
「妊婦に対する暴力はたとえデコピン一発でも許さん!!」
「まだ何もしてねぇよ」
うわっ、父様眼つき悪っ。
実の父親のこんな凶悪ヅラ見たことなかったので流石に引く。
「お前もだウェンリー、このっ馬鹿! オスカー殺す気か!?」
美樹原先生が気炎を吐いているが、殺すだなんて云い過ぎです。って?
「だってこの男わたしの子供を殺そうとするんだもの。わたしが悪いんじゃないんだもの」
へっ?
元っ帥?
「平和な夕べに殺気撒き散らすな! このドアホどもっ」
至極まっとうな美樹原先生のお言葉にヤンがロイエンタールをふりかえる。
「オスカー、ド阿呆って云われた」
「云われたな」
涼しい顔で云う両親(!?)を見ながら、なんだかイヤな汗がダラダラとでてきた。
この二人ってもしかして、もしかして・・・。
「ったく、幾つになっても加減ってモノを知らねぇ。いいから聞きなさい、ウェンリー。オスカーも。お互い元帥ってぇ地位にあるのわかってんだろが。コラ、二人揃って「解ってるけど気にする気がねぇ」って顔するんじゃねぇ」
うっわぁ。
↑それしか出てこないエマ。
「第一、ちっちぇえころから知ってるお前らが刃傷沙汰なんてお兄様が許しません。というわけでウェンリー、妊娠祝いにコレをあげましょう」
「ってミキハラ先生それは・・・」
ガサガサと紙袋から取り出したピンクの物体二つ(両手用)。
「「ピコピコハンマー」♪」
備考:トゥールハンマーより強い。
「わーあい、嬉しーー♪」
って元帥、そんなに喜ばれても・・・。
「うふふ、ありがとう祐司先生〜」
首をかしげてにっこり笑った。腕の中の子供がふかふかで可愛い。
「あ、エマイユちゃんトーマくん返すわ」
そういやずっと帰ってきてない。振り向いてまた柔らかく首をかしげる母(!?)に和みも出来ず。
「お重おろしてもいいわよ?」
「オジュウ?」
なんだか手がしびれる。と思ったら、まだずっしりと重い風呂敷包みを両手に抱えたままだった。(1年前の第13話参照)
「お赤飯・・・お祝い事に食べるご飯なの。炊いてきたのよ。一緒に食べましょう?」
重箱三段丸まる赤飯。何合炊いたんですか。
「むったあ」
ああ、トーマお帰りなさい!お母さんうれしい。
でもちょっとまって、もっと大事な問題が。
さあ、覚悟を決めてっ。
「ちょっとまってくださいお義母さん。子供って本当ですか!?」
先越された! てかアーダルベルト「お義母さん」って!? だれそれ!!!
「はーい、それは俺が美原荘の主として誓って言います。俺が診察したんで、間違いなく妊娠してますヨ」
「イエーイ」
「そんな素敵ウインク付で「やりとげました」って顔で親指立てないでくださいお義母さん」
「ハンっ」
ちー様!
「エマイユの弟か妹なんです。よろしくお願いしますねトーマパパ」
「では、息子の叔父か叔母ということに・・・」
「はーいそうです。トーマくんうれしい?」
ピコハン二丁右手にもって左手でトーマをあやす。三日前なら微笑ましい光景だったんだけど・・・。
「あーちゃうれしー」
「そうっ、おばあちゃんとっても嬉しい」
「トーマ!? トーマくんまで!? 知らなかったの私だけですか!?」
「ごめんなさいねぇ、エマちゃん。全身全霊かけてそう思い込むように仕組んでたから」
ヒドッ!
「って元帥、ウチの父に一服盛ったって!?」
「あっ、それは大丈夫よ安心して安心して。家庭菜園で無農薬栽培した安全で健康な幻覚剤だから体にいいわよきっと。ただちょおっと副作用でアタマが悪くなるだけだと思うしぃ」
「どこを安心しろと!?」
「ウェンリー、お兄ちゃん薬物の使用は許可した覚えないぞ! どこからンなもん!」
「美樹原のおじいちゃん先生の隠居の裏に花壇があったわよね。野生化して残ってたの」
「残ってたって、そんなものどうしてお前が・・・」
と、祐司の脳裏に25年も前に死んだ祖父の遺言が聞こえてきた。
『与えた知識の行く末も』
「与えすぎだろっ!」
「世間に出回ってるものなら、もっと安全で効果の高いものもあったはずだけど。手に入れるわけにもいかなかったし」
サラっとお寒いことを云うヤンに、一同凍りついたが、エマイユは意を決して割り込んだ。
「あの、ヤン元帥、もといお母様。一つ聞いてもいいですか?」
「無理しなくてもいいわよ、エマイユ。ここまで騙しておいて今更母親扱いしてもらおうなんてムシのいいこと流石に考えてないもの・・・、で、はい。なぁに? どうぞ?」
「お父様とお母様って、仲悪いんですの?」
内角高めの剛速球ストレート。
「ん・・・、ね。オスカー」
ヤンは伺うようにロイエンタールを振り向いたが、そのロイエンタールはあごをしゃくってハナシを任せたきりそっぽをむいてしまう。ちなみにロイの機嫌は極悪である。
「見ての通りメタクソ悪ぃわ」
「いや、今のだけ見るとメタメタ仲良さそげだったんですが?」
「と、いわれてもねぇ。幼馴染だし、良い悪いってよりも、「いつも通り」なのよ」
頬に手を当てて困ったようにコメントしたヤンだったが、長い髪を後ろからひっぱられる。
「ところでヤン元帥? 私からも一つ聞きたいんですが?」
「うっ、なによオスカー」
(やっぱり仲いいみたい・・・)
エマイユのゴカイはまだ続いていた。
「大荷物担いできたミキたちはなんでココにいるんだ?」
「あーーー、あっ、そうだったそうだった。まさか喧嘩の仲裁・・・でもないだろうし?」
「ロベルトに誘われたんだよ」
「ああっ! おじいちゃんたち祐司先生も呼んだのね」
ぱむっ。
「んでお前は何やらかす気だ」
「はーーーいはいはいはーーーいっ! じゃんじゃかじゃーーん今日はロイエンタール家恒例の「伝説の鍋パーティー」の開催決定ですっ!」
「・・・まったお前は酔狂なコトを・・・」
「今日はみんなでゴチソウですよっ♪」