荘子
多分・・・・あいつの望みを一番わかっていたのは俺だ・・・
俺の記憶の中の姿はまだ成長しきっていないあのころのまま、それでも、ヤツがヤツである限りそれは変わらない
いつかこんな日が来ると、思っていた。
あいつがブリュンヒルトの主砲にでもさらされていれば事態は違っただろうけど・・・
誰も、あいつを殺してはくれなかった。
だから、覚悟はしてた。
覚悟? それが俺の望みじゃなかったか?
もしかしたら違ったかもしれん。
けどまぁどうでもいい。あいつが心底から望むことであれば。
叶えてやること以外、何かすることがあるか?
「オスカー・フォン・ロイエンタール元帥」
親しげに、だが他人を見る目でやつがにこりと振り返った。
そんな目で見られたくてここに来たわけじゃないのだが・・・。
ああ、こいつ白似合わねぇなぁ
つまらないことがアタマをよぎる
いつの間にか親友の姿が見えなくなっていたことに気づき、ミッターマイヤーは首を巡らせる。
ヤツは成人男性だ。
だからといって大人といえるわけでもなく、つまり一人でほっとくとイロンナ意味で不安だ。
「ロイエンタール・・・?」
さくさくと踏み鳴らしていくと、不意に開けた視界に現れたのはブラスターのようなものを突きつけているロイエンタールの姿だった。その相手は・・・ヤン・ウェンリー!!!?
その場にはロイエンタールの部下もいたし、自分の部下もいた。それ以外のやつらもいた。
誰も反応できなかった。
ヤンもロイエンタールも顔色一つ変えていない。この場におきていることは、普通一般に俺らがこの構図から想像するような事態ではないのか? 誰もがそう思っただろう。その瞬間。
ダアアアン
腹に響く音がしてヤンが倒れた。ゼッフル粒子の爆発よりも低く、花火に近いようなその音。
弾丸など見えはしなかったが銃声に間違いない。ロイエンタールの腕に反動が来ているのならわかる。
その狙いは頭部でも心臓でもなかったからヤンはまだ生きていて、ロイエンタールを見ていた。
ロイエンタールはなおも瞬き一つせず、無表情にヤンに銃を打ち込む。
ダゥンダゥンダゥンダゥンダゥン
ロイエンタールがカチャっと銃を操作すると円筒状のものがバラバラと落ちる。その銃を見もせずに懐から取り出したわけのわからん物体を銃にあてがうと、弾が装填されたようだ。そのまなざしはヤンからピクリとも動かない。
ヤンの瞳が静かに閉じられても、ロイエンタールは一瞬も休むことなく動作を続け、ヤンに弾を撃ち込み続ける。
血が川になって流れ、着弾の衝撃でヤンの体が・・・もはや人には見えないようなヤンの体が跳ねる。千切れかけた腕が人形のように上下するその様は、悪趣味なコメディのようで。
ただただ沈黙と轟音が恐ろしい。
「ロイエンタール・・・!」
やっと我に返ったミッターマイヤーがあわてて駆け寄る。ロイエンタールの手にしている実弾銃だろうものよりも、心配したのはロイエンタールの正気。
その場にいた全員、そして銃声にあつまってきた人々がヒヤリとした一瞬だったがロイエンタールは手にしていた銃を無造作に放り捨てた。
全弾打ち尽くしたのだった。
「オイ、ロイエンタール!!」
乱暴に肩を掴んで揺さぶるがロイエンタールはピクリとも「ソレ」から視線を動かさない。
もはや「これはヤン・ウェンリーだ」といえるものもいないほど破壊され、辛うじてサイズから人間だっただろうといわれる「ソレ」から故意に視線をそらしながら、感情を写さないヘテロクロミアを見る。
ナニを考えているのだ? この男は・・・。
その瞳が一瞬やわらぎ、心から安堵した一言を漏らした。
「よし、死んだな」
「(よかねぇだろう!!!)」
あまりのことに叫び損ねたミッターマイヤーだった。
「お前、自分が何したかわかってるのか! これ誰だかわかってるのかよ!!」
そのときやっとロイエンタールが振り向いてミッターマイヤーをみた。
「ん? コレか? コレはヤン・ウェンリーだったやつの死体だ」
コ憎たらしいほど普段どおりに見える。
「死体だ、ってお前が殺したんだぞ! わかってんのか!?」
「ん、ああ、別に誰が殺したかなんて問題じゃねーよ。ヤン・ウェンリーは死んだんだ」
「いや、問題だろ! お前ナチュラルに犯罪者だぞ!!」
「はんざいしゃ・・・ねぇ。なんとなく白ける単語だが、アレか。人殺しは罪ですか。ってヤツだろう。・・・・・・・・そりゃあ罪だろうな」
人殺し・・・ロイエンタールが白けるのも無理は無い。自分たち軍人は日常的にそれをやってきたのだ。
「こ、こ、こ、コーユー時って真っ先になんだ? 裁判か? 警察?? 霊柩車・・・いや救急車か? いや、陛下のご裁断を??? とにかく今回ばかりはかばわないからな、ロイエンタール!!」
「いらねー」
と、何を思ったかロイエンタールはその場に胡坐をかいてどっかりと座り込んでしまった。
その「赤いカタマリ」の前に。
「ろ、ロイエンタール? 何をやっているんだ?」
「動きたくねーな」
さも決定事項かのように言う。
「け、けれどロイエンタール。ヤン元帥を弔って差し上げなければ」
「触るな」
ロイエンタールが冷たくはらった瞬間、その場は禁足地になった。
「これは俺が殺したんだ、俺のものだ」
「って、狩りの獲物じゃないんだから、そんなセリフが通用するかよ!!」
「当たり前だ、コイツの皮でコート作りたいとかゆったか? 俺」
目の前に死体があるとは思えない呑気さでロイエンタールが頬杖をつく。
「あ、なぁミッターマイヤー、酒くれないか? なんでもいいから1ケース」
その一言を境に、ロイエンタールはもう口を開くことはなかった。
誰もロイエンタールと「元」ヤンをその場から動かすことは出来なかった。
ミッターマイヤーが操られたように持ってきたボトルのケースにもたれ、振り向くことも無い。
ヤンの死体を見るロイエンタールの瞳は、見つめるでなく、見守るでなく。
観察ですらないそれは、実のところただの確認であったのだ。
ヤンの体が啄ばまれ、蝕まれ、死臭が腐臭となって、蛆が湧き蠅がたかり、微生物に分解され、何かの汁が出てきて雨が降り流れ、やがて草が生えてくる。ヤンが白骨となるまでロイエンタールはその場を動かなかった。
六月も終わりに近づいたころ、不意にロイエンタールが立ち上がり体を伸ばす。
目の前の地面を踏む彼は、焚き火のあとを消す作業にも見えた。
実のところビビリにビビッたホカの連中は、ロイエンタールを遠巻きに(あえてもうヒトツのほうは考えない)24時間監視という方法をとったのだ。
たまたま様子を見に来たミッターマイヤーは猫のように全身の毛を逆立てた。どんな異常事態であろうとも親友は心配だったのだ。
恐る恐る近寄ってみると、もはやあのかいだ瞬間に死にそうな臭気もなく、ただの草の生えた荒れ地に見えた。
ボトルはいつの間にかすべて空になっている。
「ロイエンタール・・・」
彼の前には粉々に砕かれた白骨。
「なんで実弾銃だったんだ?」
それは関係者全員の疑問。多少場違いではあったが。
「ブラスターは、ホラ、蒸発するだろう。蒸発はイヤなんじゃないかと思ったからだ」
答えが返ってきたのが以外でもあり、当然にも感じていた。
「ならナイフとかで切ればよかったのか? けどなんとなく趣味じゃねぇし。トマホーク・・・痛そうだよな」
即死じゃないかぎり何だって痛いわい!
「ロイエンタール、実はだな、ヤン元帥の遺書らしきものが見つかってな」
「あそ」
ロイエンタールが今まで放置されていたのは、実はその遺書のせいもあるのだが、内容にも興味を示さないらしい。
ミッターマイヤーが苦しげに顔をしかめたところで、不意に異変を感じる。
そして彼は親友の死を確認するのである。
それはメモに書かれたただの走り書きで、冗談か詩のようなものだったのかもしれない。
『わたしをフェザーンにしてください。そしてフェザーンに咲くすべての花がわたしの弔いになりますように。わたしのすべてがフェザーンになりますように』
しばらくして、ロイエンタールの遺書がでてきた。
『俺の死体はフェザーンに埋めてくれ』
死後の世界を信じなかったロイエンタールらしい言い草なのかもしれない。
日付はラグナロックの最中、ヒルダがミッターマイヤーとロイエンタールをハイネセンへ誘った日であった。
味も素っ気もないハナシ。
ロイエンタールが髪も伸びない髭も伸びない、トイレにも行かない少女マンガの世界の人になってます! ビバ!!
ちなみにロイのセリフがおかしいのは最近ときめきトゥナイト全巻読み返してたからです。
意外とネット界にときめきあるんですね。
邪悪なオーラを纏い、できちゃった結婚的な卓と木刀一本で戦うラスボス真壁くんにラブです。
てかりほちゃん生物詳しくないですからね!ヒトがどれくらいの期間で白骨化してどんな風に腐ってくかなんてしりませんしね!!前に二、三週間とか聞いた気がするけど、定かではありませんよ!ってかフツーに生きてる限り要らないですよ、ンな知識!
やっぱこの二人には心中が似合います。
土葬はいいですね。火葬よりもスキです。ってそんなことフツーのヒトは喋ったりしませんよ!
けど、私はたしか以前友人と喋った記憶がある・・・フツーに・・・
葬式には5回くらい出席して、4回くらい骨を拾いました。焼き場まで行って二三時間?待ってるんですが、おにぎりとかを食べて喋ってる間に出てくるのはカスカスな骨とちょっとの灰。
残りはどこへ消えたの? 納得がいきません。
けど質量保存の法則とか、地球は大気圏まで地球らしいからいいんでしょう。
土葬にはあこがれますが、法律が変わって土葬が出来なくなるまえに集団自殺した中国の年寄りには負けます。
ちなみに荘子はソウジと読むらしいです。東洋哲学科の友達がゆってました。送辞ではありません。
どっちかってーと私は荘子よりも老子のほうがすきです。まさかロウジとはだれも読まないでしょう。
兵は不祥の器にして君子の器に非ず
6・1 りほ