ほのぼの家族
父親=ロイエンタール。母親=エルフリーデ。息子=フェリックス。
「おとーさんおとーさん、おかーさんが、忙しいからおとーさんに遊んで貰いなさいってぇ」
「ん?」
クールビューティーなヴィジアル系元帥は、幼い息子を見る。
「今日は何をすればいいんだ?」
この幼い息子はリクエストを遠慮無くふっかける。
確か昨日は絵本だった。
「あのねぇ!今日はこれぇ!おかーさんがさっきくれたのぉ!」
おもちゃ用の台車に乗せて、フェリックスがガラガラと引きずってくる。
「ほぅ。今日は時限爆弾か」
「おとーさん、かいたいしよう!かいたい!!」
「そうだな。ほっとくと危ないからな」
「いいか、フェリックス、時限爆弾は時間がきたら爆発してしまう。だから、ここの数字がゼロになる前に素早く解体しなくてはいけない」
フェリックスは目をきらきらさせて「ママ特製の」時限爆弾を見る。
お利巧なフェリックスは四つになる随分前に60までの数字を覚えてしまっていた。ただし、減るほうにしか数えられないのだが。
後、ロイエンタールは簡単な手順と、いつも云っている基本的な注意事項だけをいうと、幼い息子が自分の工具セットを取り出すのをのんびりと眺める体勢を取った。
「おとーさん!出来たよぉ!」
途中何かあったら助けるつもりだったが、フェリックスは「いつも通り」何も間違えずに解体を成功させたので、ずっと見ていたままだったロイエンタールは、フェリックスに云った。
「よく出来たな、フェリックス。あの女にも見せてくるといい」
「はーーーい!」
発火装置と爆薬のなれの果てを台車に乗せ、フェリックスは元気よく母のいる台所へと向かった。
「ぶっぶーくるまがとーりますよーー♪」
作詞作曲フェリックス。
幼児は聡明で快活な子供に育っている。
「おかーさん、みてみてぇ!」
幼児は誇らしげにただのガラクタと化した元時限爆弾を母に見せた。
エルフリーデも自分の息子は可愛いのか、いつも手放しで誉める。
「凄いわ、フェリックス。ここの配線難しかったでしょう?」
「あのねあのね、こことここも頑張ったんだよ?」
「もうすぐでお夕食だから、それ何時ものところに捨ててらっしゃいね?」
「はぁーーーい!」
息子の後ろ姿を見送ってから、エルフリーデは呟く。
「ちっ、今日も失敗したか。しぶとい奴」
鍋が焦げないように注意しながら、今日も熱心に包丁を研ぐ。
妙にサマになっているのは何故だろう。
「今日は・・・ジギタリスにするか」
調味料入れを見ながらエルフリーデは呟いた。
くどいようだが、彼女も息子は可愛いのである。