眠らない街の ある日のプリンセス☆ソーダ
 
最近、イゼルローンでは恋の嵐が吹き荒れているという。
最前線という特殊な環境と、一時的戦闘空白状態と、先への不安なんじゃない?
と、偉大なるイゼルローン要塞司令官はのたもうたが、まぁ、それはそれでよし。
けれど、恋愛にはとんと縁のない柏真雪ちゃんまで元気がありません。
ヤンの幕僚一同は野次馬根性を発揮して、目の色を変えたものですが、
当の母親と、兄は呑気なものらしくて。
「はぁ、雪が、恋。ですか」
「俺の観測では、ちゃんとメシくってるから大丈夫なのっ」
くじ引きで負けて地雷踏みにきたユリアンに、ヤンと美時は乗らない返事だ。
リンツとアッテンボローとポプランが代表でブーイングかます。
「でも閣下、明らかにおかしいですよ。最近ぽやんとした顔で遠くを見ていたり、むずかしい顔で考え事していたり、急に機嫌よくなって歌まで歌いだしたり」
シェーンコップが口を添えたが、ヤンはさらに眉間のしわを深くした。
「どう思う、美時?」
「限りなく、クロにちかい灰色だと思います。サー」
「どういうことなんですか?」
これはフレデリカ。
「恋ってったって、イロイロあるだろう。相手が生身の男なら無条件で祝福してやるさ」
「血の通ってる男、いや、この際兄として、女でもいいから」
「あーあ、つまんないなー。この際雪に本当に男が出来たら、いい退屈シノギになるのにー」
「うわ、ひでぇ・・・」
 
 
「ねぇ、ママ! 銀河帝国と自由惑星同盟って、どっちが受けだと思う!?」
(・・・やっぱり人間じゃなかった。なんなのそのCP)
想像の斜め上をいく問いに、ヤンは思わず肩を落とす。
「また古典名作に嵌ったねぇ。アレかよ。CPは?」
「仏英!」
「おーぅどーぅじゃーーーん」
「母さん、母さん! 目が死んでる!」
「こないだアーカイブでねぇ、すっごいカッコイイ若仏見つけちゃったの! それから仏兄ちゃんが大好きでさぁv かぁっこいいよねぇ〜」
目がキラキラ輝いている。母と息子はげんなりした目になった。
真雪の目がこんなに生き生きするのは、滅多にない。
「久しぶりにスイッチ入ったぁ〜〜」
仏英夫婦で、子供メリカナとか超可愛すぎる!!メリ×カナも好きだけど、米×仏とかも好きーーー。
最近司令官室がリビングと化しているが、他の幕僚一同にはさっぱりわからない言葉の羅列で、ヤンと美時が益々沈んでいく!!
「で、帝国と同盟、どっちが受けだと思う?」
 
 
「だから、今の状況を仏英っぽくすると、どうなるかなぁ?」
「今の宇宙を仏英に当てはめるのは無理があるんじゃ・・・」
「だって、ボコり愛は愛でしょう!?」
「違う!」
「100年戦争は愛でしょう!? 180年も戦争やってるんだったら、そろそろ結婚してもいいじゃない!」
「てかそれ以前に「戦争=付き合ってる」じゃないから!! あのツンデレ紳士と髭ワイン基準に考えないで!!」
「だってぇ、ストレートに考えたら、米と独でしょう? そのCPは雪の趣味じゃないもの!」
「んじゃ、フツーに考えて、銀河帝国が攻めじゃないかい? 年上だし」
「仏兄が攻めてるころって、あっ、ちびりす!?」
「ハッ、ノルマン・コンクェスト!!?」
「右ストレートはアイラブユー、上段回し蹴りは照れ隠し!」
「無理だよ!! 痛ぇよ! かなり痛ぇやつらだよ!!」
「そんな痛いことを180年もやってるじゃない」
「「た、確かに・・・・」」
母と息子は痛いところを突かれた。確かにこの現実は痛すぎる。
「ってことはーー、帝国×同盟を仏英で考えるとーー。そっか、ママが紅茶党だから、同盟が海賊なのね」
「・・・ウチの一族の誤変換機能、どうにかならないかねぇ」
「無理だと思うよ、母さん」
「ってーことはーー。海賊紳士がママの上司で、海賊紳士の上司がヨブ・トリューニヒトなのね。国と英雄は仲いいんでしょ? 「仏兄ちゃんのあの子」みたいに」
「ってことは、あの大英帝国様が。あの喧嘩上等な現役バリの目で母さんに「そこはお前の悪知恵で頼む。ハッハハ」とか云ってんの?」
「うっわーーい、超こわーーい。腹黒コンビだぁ〜〜」
ゴン×2
「母さん、痛い」
「ってことは、今の仏兄の上司って実質ローエングラム公だよね? 貴族政治で薬漬けみたいにボロボロになった仏兄が、ローエングラム公に助けてもらって、愛が芽生えるのね? オッケー、任せて。知ってました!」
「そこで愛が芽生える必要がどこにある」
「キャーーー、若仏っぽいいいい! 帝国ロココだしっ!ゲルマンだしっ!」
「ゲルマン・・・といえば、ゲルマンさんの子孫は仏兄・・・」
「やーーん、やっぱり帝国ってば仏兄なんじゃーーん! ただ単に愛を囁く言語じゃないだけで!!」
(未だかつてウチの娘がこんな元気だったことがあろうか?)
「ママ、落ち込まないで! 太陽が沈まない国は自国民には多分80パーでデレだから!」
「わかった、同盟は帝国には100%ツンなんだな?」
「ツンが重過ぎる・・・」
「わかったわ。雪、これからは同盟市民の誇りをもって、戦争するから! ビーム一撃でも英の仏兄ちゃんに対する愛の言葉だもの! イゼルローンは最前線! 愛の交わる修羅場だものっ!」
「お前、どんだけ戦争を楽しくする気だ」
「もーー、同盟ったら帝国が気になって気になってたまらないのにっ! もうちょっと素直に愛情表現しようよ! あっママ!」
「なんだい?」
「トゥール・ハンマーを改名しようよ! ジュッテーム砲とかさ!」
「ぶはッ!」←ツボった。
『ジュテーム砲発射準備! エネルギー充填50%・・・80、90、100!』
『よし、ジュッテーム砲発射ぁっ!』
『ジュッテーーーーーーーーーム』
バン! バン! バン!
「す、すげぇ、こんな笑い転げる母さんはじめて見た」
「あと、発射、をジュッテームに変えるとかさ、帝国も、同盟も」
『ジュッテーム!』
『ジュッテーム!』『ジュッテーム!』『テーム!』
「ちょ、ちょーキショイ、ちょーうける。チョー死ぬ。てか、雪、ソロソロやめて。ママ、マジで死んじゃうから。笑いすぎで」←ためしにパエッタとクルブスリーとドーソンと帝国軍人のオッサンで想像した。
「てか、フツーに仏英はずして考えると、フェザーンが攻めなんじゃないの?」
「ダメーー。フェザーンはにーになんだから。私たちのご先祖様だもの」
「哥々か。そういや昔藤波がお前くらいの年に中兄×本田さんやってたけど」
「本田さんはダレだ!?」
「いや、問題はそこじゃないし」
「そういや、私とお兄ちゃんって、にっさまと誕生日同じなんだよ!」
「2月11日だからねぇ・・・」
「まぁ、鬼畜攻め帝国に勝気受け同盟ってことになるんじゃないの?」
「あーー、リバありっぽい。鬼畜受けかぁ。弄ばれてそう」
「お前、一言で妄想ふくらみすぎじゃない?」
「妄想は乙女のたしなみだもの!」
「うん、そうだね。ゴメン。ママが間違ってた」
「ハッ! じゃあ、ママの奇跡って、もしかして「ほあたぁ!」なのっ!?」
「ああ、例の天使の・・・」
「いいや、ママの奇跡はちんちくりんステッキが起こしてくれるのさ」
「・・・もしかして、父さんってジャングルから抜け出せないの?」
「しかもイイとこでMP切れるの?」
「そーなんだよねーー。そこが困りモノ」
「じゃあ、ママ。天使は諦めるから、今度、伝説の戦闘服でパパとのカラミを・・・」
「真雪v ボコり愛の起源はオレなんだぜ☆」
「きゃーーーー、母さんがゆうとシャレになんなーーい」
(ガクブルガクブル)
 
その後、パパがやってきたイゼルローン攻防戦で、ヤンが要塞主砲を威嚇でぶっぱなした時、柏ツインズが大爆笑していたのは、また関係ない話である。多分。


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