眠らない街の星の流れる夜

7月7日、それは有名な恋人たちが天の川で逢引する日として有名ですが、
366日のウチの一日であるかぎり、その日に生まれてくる子供もいるのです。
フェザーン月下街、大観園の奥の奥。お嬢様中のお嬢様として、宝石のように、玉のように、大事に大事に生まれてきたおひいさま。
豊かな黒髪、萌える緑の瞳の柏真沙輝様のお誕生日でございます。
年に一回の大イベント。
今回は彼女の10歳のお誕生日を覗いてみましょうか。
今年のコスプレパーティーのネタは某有名な国擬人化漫画、ヘタ○ア。

誕生日の三日前。据わった目の彼女がみんなの前に七本の線を引いた紙を持ってやってきました。小脇にかかえたカールはサラっと無視しましょう。そら真沙輝が10歳のお誕生日ならカールはまだ8ヶ月のガキですものなーー。←9月生まれ。
「皆さん、自分の名前を書いてください」
「・・・・・・・そうきたか」
「結局考えつかなかったんだな、キャスト」
ヤンとロイが代表で呆れた顔でコメントしました。毎年のことです。
「んーー、とりあえず、みんなで連合ファイブと枢軸三国ね。カールはちびたりあちゃん決定だから、線は七本。ちなみに、アミダの神さまの命令は絶対です」
同じ理屈でじゃんけんの神さまの決定も絶対です。
「んじゃ、名前書いて、好きなだけ横棒足してねーー」

結果。
羽鳥=米、直樹=仏、シャリア=英、ディヴァ=露、ヤン=日、ロイ=中、真沙輝=独。
「シャリアーー、やっぱり僕たち運命の赤い糸で結ばれてるんだねーーv」
「フっ、ざけんな!」
「ぶ、ブリタニアエルボーー」
「ナオちゃん多分違う」
「シャリアはツンデレじゃないよ。絶対違うって」
「没有問題、俺は中にーにでいい、ある」
「ねぇまーちゃん」
「何? ウェンリー」
「僕、露さまやりたいなぁ」
「だめよ、ウェンリー。あみだの神さまは絶対でしょ?」
「やりたいなぁ」
にこにこにこ
「だから、あみだのか」
「やりたいなぁ。ねぇ」
「・・・、・・・・・・・・・・・・・」
彼らは後に証言します。『彼の背後に冬将軍が見えた』と。
あみだ籤の神さま敗北。
「譲歩? ロシアにそんなサービスないよ♪」
水道管もって浮かれるヤンがいましたとさ。
「んっ、じゃあ私だってにっさまがやりたいもんっ!」
「えーーー、でも俺、ルートよりもフレッドのほうがいいなーー。代ってよトリさんv」
「僕はルートでもかまわないけどさ、しょーがないなーD」
「わーいv」
あみだの神さま完敗。
「で、も、シャリアは変えて欲しいってゆわないの?」
「別に、変えても、ロクなやついないじゃん」
首をかしげた角度も綺麗な直樹に、プイと顔を背けるシャリア。
「シャリア、やっぱり僕のこと・・・!」
「ちッちが・・う、別に英とくれば仏なんて決まってるわけじゃないだろ!」
「そーかなぁ、仏英ってゆったら大抵ふーふ・・・」
仏英→とくれば米英→さっき自分から米がいいってゆったのはダレ?
「いっぺん死んでくるかい? ディヴァイン」
「だから、どーしてお前ってシャリアがからむとそーなの、直樹!」
「愛のためなら死ねる。・・・愛の国だし?」
「うわーん、本気だしコイツーーー!」
「俺しらん」
「キミって意外と無情だよね、シャリア」

誕生日二日前。綺麗な大きなお人形。
「みんなの衣装は出来たから。さて、問題はルーシェンよね」
べべん。と効果音つきでルーシェンの前に三人が立ちふさがります。
すげぇな、いちんちで出来るのか!
「とにかく」
かっこよくて、←真沙輝
笑えて、←ヤン
変なヤツ! ←ロイ
「なんでキミタチこーゆー時だけ一致団結すんのさ」
かっこよくて、
笑えて、
変なヤツ!
↑団結してない。
「も、燃えてるねキミタチ・・・」

「とりあえず変なヤツがいいんでしょーー」
「シナティ」
「まて真沙輝、なぜ真っ先にそこを拾う」
「アルカパ」
「私はルー兄ならどんなカッコも華麗に着こなしてくれると信じています!」
「パンジャンドラム」
「んーありがとねー、真沙輝。お兄ちゃん微妙に嬉しくないなぁ〜・・・てかオスカー!それムリだから!」
「ルーなら出来るかなぁ、と・・・」
「ありがとね、でもムリだから!」
「父さんカッコ悪っ」
「本気で云わないで、パパ泣くよ! てかパンジャンドラム出来なくてかっこ悪いってパパ認めないから!」
「んじゃパンダ。中国の」
「だめだよ! 中の人は僕だもん!」
「あ、そっか」
「ふふふ、いいよね? みんな僕のものになるんだからv」
「ならねぇよ!」(ゴスっ)
「いたっ! 真沙輝ぃ」
「ロシアと中国塗りつぶして世界地図もっぺん見直してみろ!」
「ってか、お前ら、俺様のこの国宝級の美貌を全く無視してくださっちゃうのね!」
「美貌?」
「顔?」
「!」
↑三人のココロが一つになった瞬間。
代表してロイエンタールが口を開きました。
「サディクさんだろ」
「ええええええ!」
「何が不満だ! かっこいいじゃねえかあの仮面!」
「カッコイイじゃんか、トルコの民族衣装!」
「そーよ、カッコいいじゃない! あのエロ親爺風の衣装! と仮面!」
「お前ら三人とも、俺を一体なんだと!」
「「「・・・・・」」」
「あ、ごめんなさい。やっぱいいです」
というわけで、
カッコよくて、
面白くて、
変なヤツ、な、サディクさんに決定しました。

一日前。
「いしょーーうあわせでーーーーっす!」
「ぎゃーーーー!」
「おお、似合う!」
「カッコイイ!」
「レッツ・水煙草!!!」
三人+ルーがそんなぎゃーぎゃー遊んでいたころ。
「おーー、何やっとるんだお前さんがた」
「タイロン伯父さん!」
「めっずらしい、タイロン久しぶり」
「お久しぶりです、タイロン様」
「あーーにーーきーーー助けてーー」
「サバトか? イケニエか? まっずい時に帰ってきたなァ」
「じゃなくって、弟を助けてよ、タイロンお兄様!」
「てか、なんでお前そんなチンドン屋サンみたいなカッコしてんのよ」
「明日は七夕なんです、タイロン様」
「あーーあーーあーー、そういやそんな時期だっけ。けど、コスプレしようにも明日じゃなあ」
「じゃあ伯父さんローデリヒさんは? 前に月下祭でベルバラやったときの衣装があるからアレでできるよ、フェルゼン様!」
「ちゃんとマリアツェルひっつけろよ」
「うーーん、そうだな真沙輝。キミのお祖母様がエリザベータさんをやってくれるならいいかも」
「説得します!」
「しかしいいのか、俺がお貴族様で」
「たまには視点が変わって楽しいですわv」

当日。パーティー、てか、宴会。

「おや、宮姉さん、そのかっこう可愛らしいですね」
「あら、タイロンさんも意外と似合いますよ、その格好」
「光栄です」

「かーーーーーぁるぅ、めっちゃ可愛いわ、よしよし」
にっさまのコスプレにはデジカメは標準装備な真沙輝がパシパシとシャッターをきりまくります。
ちびたりあ風ベビー服のカールはむしろ浚うしかないという愛らしさです。
と、そのカールが何かに気づいた様子。
ダジョーーーン!
キャキャキャv
「我が国に入ってくるな、なのである!」
ダジョーーン!
キャキャキャ!
「そっか、カール、このライフルが気に入ったかぁv」
今日もフツーに眼帯の美少女は息子の頭をよしよしと撫でます。
「藤波様!」
「藤!」
「やっほーー、真沙輝。お誕生日おめでとーv 世界の銀行な傭兵様のコス、似合う?」
「「にあうーー」」
「そっかそっか、カール。この「引き金をひくと、音が出るオモチャ」が気にいったか、しょうがない。じゃあお前にあげよう。お土産だよ」
「れ、レティシア!?」
「タイロン兄さん!」
「兄弟三人揃うのって何年ぶりだぁ?」
「あ。レティシア。子供が産まれたらしいじゃないか。おめでとう。いや、結婚おめでとう。大分あってなかったな」
「ありがとうv ルー兄さんにはちょくちょく会うのにね。タイロン兄さんはニアミスばかりでしたもの。ところでルー兄さん、似合うねその衣装」
「うん、俺ってコレ普段着にしていいかな?」
「自分の船の中だけならいいぞ、ご当主殿」
「兄貴、頼むから当主殿ってのやめて・・・」

「多分、ヤン家先代兄弟かくの、これ一回こっきりだよねv」←真沙輝
「だよねv タイロン伯父さんてばただの柏の宮に片思いしてた故人だしねv」←ヤン
「てか、さっさと終わらすぜ。7月7日が終わっちまう」←ロイ
「じゃ、みんな一言づつーー」←真沙輝
「ひまわりに囲まれて暮らしたいなv」
「ビールでもヴルストでもいいから、とにかくおなかいっぱい食べたいよ」
「んーじゃ、鳥ちゃんキャスト変えないほうが良かったかな〜、HA―――HAHA! こんなハンバーガーばっか食べてたらメタボになっちゃうんだぞ!」
「愛の国だからv」
「えーっと、ツンデレっぽいこと、ツンデレっぽいこと・・・ツンデレの起源は俺なんだぜ?」
「シャリア! それ紳士じゃないよ!」
「世界のヨン様なめんなよ」
「いつの間にヨン様になったの、お前!!」
「真沙輝――、俺も中兄の私服普段着にしたい」
「いつもとたいしてかわんないじゃん、その格好。というわけで、恐れ入ります。みなさんありがとうございましたv 写真がいっぱいとれましたよ」
「ちゃったーーーー!」(←パスター!といいたい)

当日。パーティーではない場所。
「だよなぁ。終わらすよなぁ。ワシの子供ってそんなんばっかだよなぁ」
はぁ
執務室で栄じいは一人ため息をつきました。
「朱鷺ちゃん(嫁)、シンレン(ヤン家先代)、なんでワシを一人置いて逝ってしまったんじゃぁーー」
うっうっうっ
「一人楽しすぎるぜーーー。って強がりでも言いたいよなぁ」
あっ
「よく考えたら短冊もまだ書いてない。うう、一人楽しくないぞ・・・」


「パパ、ママ、今年も楽しいお誕生日だったよ」
そんなこともしらず、真沙輝は墓の亡き両親に報告します。
「来年も、再来年も、みんなで一緒にお誕生日出来るといいな」

って、そんなこと云うからフラグが立つんだよ真沙輝・・・。
そう、これが皆で過ごした最後の七夕になるのでした。


戻る